航空業界では、飛行機をターミナルから離れたスポットに駐機することを【沖止め】【オープンスポット】などと呼んでいます。
飛行機に乗る際、搭乗口を通過後バスで移動したり徒歩で飛行機まで向かった経験はありませんか?
この場合、飛行機は沖止めスポットに駐機しています。
なぜこの沖止めが発生するのでしょうか。
- 沖止めの飛行機に乗る際の注意点
- 沖止めが発生する理由
- 働いていた頃の裏話
飛行機の世界は、船の世界から来ている用語がたくさん使われています。
飛行機のことを「シップ(ship)」と呼んだり、客室のことを「キャビン(cabin)」と言うのは、船の世界と一緒です。
そして【沖止め】という言葉も本来船で使われる用語ですが、航空業界でも使われています。
今回は、この飛行機の沖止めについて、空港で10年以上働いていた筆者がわかりやすく説明していきます。
私は飛行機のスポット管理業務の経験もあります!
沖止めの飛行機に乗る際の注意点
航空機の駐機スポットには、沖止めスポットとPBB(ボーディングブリッジ)がつけられるスポットがあります。
PBBがあることで、飛行機から降りる時に雨の日でも濡れずにターミナルに移動することができます。
一方で沖止めスポットの場合、ターミナルまではバスか徒歩で移動しタラップ(階段を搭載した車両)を使って飛行機に乗るのが一般的です。
全ての飛行機がPBBスポットを使えたら良いのですが、そうもいきません。
たまたま乗る飛行機が沖止めスポットのこともあるので、沖止めスポットだった場合の注意点をあげてみました。
- 搭乗口の締め切りが早い
- 雨に濡れてしまうことがある
- 事前改札や優先搭乗はバスへの優先乗車
- 到着時、ターミナルに到着するまで距離がある
- 飛行機を近くで見れる
搭乗口の締め切りが早い
沖止めスポットは、ターミナルから離れた場所に存在します。
そしてそのスポットまで行く主な手段が、バスになります。
搭乗口通過後にバスに乗り、飛行機まで5分くらいかけて移動をします。
そのため、通常よりも早く搭乗開始をし早く搭乗終了することが多いです。
お客様には搭乗10分前までに搭乗口に来るよう案内している航空会社が多いので、出発時刻の10分を切ってしまったら、有無を言わず搭乗を締め切りをすることがあります。
PBBスポットなら、ギリギリの5分前まで待つことがあるよ。
飛行機の出発時刻は、飛行機が動き出す時間です。
そのためバススポットで出発する場合は、普段より早く搭乗口付近で待っている必要があります。
また一般的に搭乗口の数字が大きいほど、バスで沖止めスポットまで行くことが多いです。
羽田の場合、1タミなら30~40、84~91番搭乗口、2タミなら500番台がバスになります。
雨に濡れてしまうことがある
搭乗口通過後に屋外を歩くことになるので、雨の日は濡れてしまうことがあります。
バスで移動なら最小限の濡れで済みますが、歩く場合は大変です。
傘を貸し出ししていますが、それでも多少は濡れてしまう可能性があります。
また雨だけでなく、風邪が強い日は帽子など飛んでしまう恐れがあるので気を付ける必要があります。
雪国の場合は、雪の上を歩くことになるので転ばないよう注意が必要です。
せっかくセットした髪の毛がぐちゃぐちゃになるよ
事前改札や優先搭乗は、バスへの優先乗車
飛行機の上級会員や赤ちゃん連れの場合は、一般のお客様よりも先に飛行機に乗れるサービスがあります。
しかしバスで沖止めスポットまで移動する場合、バスへの優先乗車になります。
そして必ずバスの椅子に座れるわけではありません。
グランドスタッフも基本最後のバスにしか乗車しないので、バスの席に関してはお客様同士の譲り合いでお願いしています。
そしてバスは1台50名程乗せて出発するので、立つ人がいたりと案外ギューギューで駐機場に向かいます。
子供連れなどで、どうしても席に座りたい場合は2台目のバスに乗るなど、搭乗口のグランドスタッフに相談してくださいね。
到着時、ターミナルに到着するまで距離がある
沖止めスポットは、ターミナルから距離がある場所に駐機します。
当然ターミナルまでの移動に時間がかかります。
空港内を動く車は、飛行機が動いていたら停止するなど独自の交通ルールがあるのでスムーズに到着する時といつもよりも時間がかかる場合があります。
人よりも預けた荷物の方が先にターミナルに到着することもあるよ。
飛行機を近くで見れる
これは注意点というより、良い点ですね。
PBBスポットだと飛行機全体を近くで見れませんが、沖止めスポットの場合近くで見る事が出来ます。
旅行者は写真を撮ったりしていましたよ。
飛行機のエンジン下など危険な場所もあるので、勝手に動くことはできません。
しかし写真撮影は可能なので、どんどんしてください。
飛行機付近にいるスタッフは安全監視の業務があるため、写真を撮ってあげることは難しいです。
撮影をする際は、お客様自身でお願いします。
なぜ沖止めが発生するのか
全ての飛行機がPBBスポットを使えたら良いのですが、現実問題そうもいきません。
なぜ沖止めスポットが発生するのでしょうか。
主な理由はこちらの4点です。
- PBBスポットが空いていない
- 整備が必要、次の便まで時間がある
- スポット契約上やむを得ない
- 保安上の理由
PBBスポットが空いていない
常にPBBスポットが空いているわけではありません。
便が立て込んでいる時間帯は、どうしても地方路線の小型機を中心に沖止めスポットを利用します。
また機種によっては利用できるPBBスポットも限られていますし、便が遅れたらスポット繰りが大変になります。
既に飛行機は空港に到着しているのに、PBBスポットを空くまで長時間待たせるわけにもいきません。
やむを得ない場合は、急遽沖止めスポットを使うこともあります。
整備が必要、次の便まで時間がある
到着後に定期点検や整備が必要な場合、最初から沖止めスポットを利用することがあります。
また翌日まで飛行機を使わない、次に使うまで数時間ある場合も沖止めスポットを利用します。
飛行機を1度PBBスポットに停めてから、沖止めスポットに持って行くこともできますが、トーイングをするのも一苦労だったりします。
だったら最初から沖止めスポットを利用する方が、効率が良かったりするのです。
スポット契約上やむを得ない
空港ビルと航空会社は使えるスポットやPBBの契約をしています。
PBBを使うのも使用料がかかってしまうので、LCCなどは節約上沖止めスポットを使うことが多いです。
保安上の理由
サミットなど開かれる時、国賓が飛行機のタラップから降りてくる姿をテレビで見たことがありませんか?
政府専用機などの国賓を乗せたフライトは、保安上の観点から沖止めスポットを使うことが多いです。
働いていた頃の裏話
空港職員の多くは、沖止めスポットを嫌います。
スポット計画を立てる段階で、沖止めスポットを利用すると決めていたらいいのですが、急遽の沖止めはブーイングの嵐。
私はスポット管理の業務をしていたので、なるべくPBBスポットにするよう努力していました。
沖止めは最終手段にしていた。
沖止めスポットを利用する場合、人員を多く捻出する必要があります。
例えば、沖止めスポットの飛行機に車椅子を利用する人が乗っている場合、タラップを降りれませんよね。
その時は別途専用車を用意する必要があり、運転手や係員を数名必要とするのです。
そして沖止めスポットはターミナルから離れているので、PBBスポットよりも移動に時間を要します。
航空業界はどの部署も人員不足なので、そんな中の急遽の沖止めは厄介なのです。
癒しの時間になることも
ターミナルから離れている分、スタッフにとってはゆったりとした時間が流れるので束の間の癒しの時間だったりもします。
お客様が飛行機に搭乗するまで、機側のスタッフはCAと雑談をしたりすることも。
バスハンドリングの時、グランドスタッフも最後のバスに乗り沖止めスポットまで行きます。
普段室内で働いているので、たまに沖止めスポットまでバスに乗り、飛行機を近くで見送るのは楽しい時間でもありました。
晴れた日は気持ちよかったな~
まとめ:『沖止めスポットから出発時は、気をつけろ!』
飛行機に乗る時に、「飛行機まで連絡バスでご案内します」と言われたら、それは沖止めスポットに飛行機があるということです。
バスでの案内は、PBBスポットを利用する時と違い注意点があります。
- 搭乗口の締め切りが早い
- 雨に濡れてしまうことがある
- 事前改札や優先搭乗はバスへの優先乗車
- 到着時、ターミナルに到着するまで距離がある
しかし飛行機を間近で見る事が出来たりと、飛行機好きの人にとってはとても楽しい時間です。
普段歩けない場所を歩くことになるので、旅のワクワク感もあがるでしょう。
乗り遅れには気を付けて、沖止めスポットでも楽しい空の旅をしてくださいね。
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