2024年5月31日、那覇空港が悪天候のため米軍基地である嘉手納基地に民間機が3機(JTA53便、JAL907便、ANA467)が臨時着陸(ダイバート)をしました。
嘉手納基地に民間機が緊急着陸するのは、数年に1度のため比較的珍しいケースです。
そして嘉手納基地は米軍基地のため、色々と手続きが面倒なんです。
今回の場合は正午頃に嘉手納基地に着陸後、那覇空港到着まで合計8時間も機内に滞在する事態に。
外に出ることは許されず、ずっと機内ですよ。
頭がおかしくなりそうですよね…
- 嘉手納基地に民間機が臨時着陸するケース
- 緊急着陸し再出発するまでなぜ時間がかかるのか
- 補償などはあるのか
上記3点について、航空会社でオペレーション勤務経験がある筆者がまとめています。
また気になる補償に関しても触れていますが、これかケースバイケースのため「必ずこう!」という決まりはありません。
航空会社によっても、補償内容が異なるのでSNSでの声などもまとめてご紹介します。
嘉手納基地に民間機が臨時着陸するケース
なぜ嘉手納基地に臨時着陸をするのでしょうか。
鹿児島空港や宮古空港を利用した方がよかったんじゃない?と、思いませんか。
実際に働いているスタッフも、嘉手納基地に臨時着陸をするとなると準備も含めてすごく大変です。
専門的な話もありますが、なるべく分かりやすいようにまとめてみました。
那覇空港の代替空港は嘉手納基地
まず飛行機は、目的地に降りることが出来ないことを予測して代替空港(以下:オルタネイト)を選定します。
これはどの飛行機も必ず選定をしており、その分の燃料を搭載して出発しています。
このオルタネイトを選定する方法は飛行場の運用時間や距離、滑走路長、天気などいくつかあるのですが、
通常運航時の那覇空港のオルタネイトが嘉手納基地です。
例えば到着時刻時の那覇空港の天気があまりにも悪いなど、条件付きの運航であればオルタネイトは嘉手納ではなく「出発地空港」や「鹿児島空港」だったりすることもあります。
つまりあらかじめ天候の悪化が予測ができていたら、その分の燃料を搭載し出発することになります。
では、2024年5月に起きたケースで考えてみました。
霧が発生していた
今回の場合、那覇空港には低い雲と霧が発生していて視界が悪い状態が正午まで続いていました。
通常、霧は日照と共に解消していきます。
しかし当日は、正午になってもなかなか霧が晴れずに滞留していました。
そのため、到着機は沖縄本島の上空をぐるぐると旋回しながらホールドしたり、ゴーアラウンドする飛行機がたくさんありました。
それに加えて、部品落下で一時滑走路閉鎖もしていました。
那覇空港へ向かう飛行機は、着陸待ちで大混雑です。
嘉手納基地に臨時着陸をした3機も、何周も上空を旋回し順番待ちをしていました。
しかし残念なことに燃料が足りなくなってしまい、嘉手納基地に緊急着陸をしないといけない事態に陥ってしまったのです。
出発前に例えば「鹿児島空港」「宮古空港」などに着陸できる燃料の搭載があれば、ギリギリまで上空まで粘って無理と判断し、他の民間機が利用している空港に向かったでしょう。
しかし今回は、他の空港まで向かう燃料が搭載されていなかったのかなと推測します。
那覇空港にこんなにも霧が滞留するのは珍しいことだし、事前に予測した天気予報も外れたのでしょうね。
それに那覇空港の滑走路にはCATⅢがないからね。
嘉手納にはあるから降りられたのかもね(専門的な話)
やむを得ない場合のみ使う
嘉手納基地に臨時着陸をするケースは、那覇空港の天気が急に悪くなった場合の他にもこんなケースがあります。
嘉手納基地に緊急着陸をするケース例
- 那覇空港で何かしらの事件が発生した
- 機内に体調不良者が出た
過去には那覇空港上空をドローンが飛行していると連絡が入り、旅客機が嘉手納基地に向かったこともあります。
那覇空港が滑走路も含め閉鎖になった場合、余分な燃料の搭載がない旅客機は嘉手納に向かうことがあります。
つまり、予測不可能な事態が起こった時に使われる空港が嘉手納基地なんです。
これは離島ならではの苦悩なんですよ。
本州の場合、羽田・成田・名古屋など民間機が利用している空港が密集しているのに対し、那覇空港の場合は1番近くの空港でかつ大型機が離発着できるとなると鹿児島や宮古、石垣とかになりますからね。
いつもオルタネイトを鹿児島空港や宮古空港にしていると、燃料を多く搭載することになります。
燃料代が高騰したり、その分貨物が搭載できなかったりと色々と弊害が出てくるんです。
嘉手納基地に着陸し、再出発するまで
嘉手納基地に臨時着陸をしたら、最悪です。
少なくとも再出発まで2時間以上は要しますし、今回は8時間と過去稀に見ない缶詰状態ですよね。
ご存じの通り、嘉手納基地はアメリカ軍の基地のため勝手に降りることは許されません。
飛行機のシェードも下げっぱなしで、窓から外の様子を見ることは許されません。
そこは異国です。
日本にある異国なのです。
だからと言って、8時間は時間がかかりすぎじゃないですか?
嘉手納で全員おろして、地上交通で行くほうがラクなのにね!
なぜ時間がかかる?
なぜ時間がかかるかというと、全て米軍の指示のもと動かなければならないからです。
米軍も飛行練習などがあるので、そのスケジュール調整をしたり民間機の対応をする人を指示したり、スポットを割り当てたりと多忙になります。
そして他に優先順位が高いことがあるなら、民間機は有無を言わず後回しにされます。
そして、米軍の指示のもと給油を依頼します。
この給油がまた時間を要するんですよね~。
【嘉手納基地に着陸した=燃料が残っていない】になるので、嘉手納基地で給油をしてから那覇空港に向けて再出発をします。
給油の許可が下りるのに時間がかかります。
そしてお金を支払う必要があるので、そのやりとりにも時間がかかります。
支払いは基本的にクレジットカードで対応しているようですが、毎回対応が異なるそうでドル札を現地まで運んだりすることもあるようです。
原則嘉手納基地に民間機が臨時着陸をしても、那覇空港からの人員は派遣せずに現地で給油して出発することになっています。
しかし現金で支払えと言われたら、嘉手納基地にドル札を持って行かなければなりません。
その場合、那覇空港から嘉手納基地までは車で60分くらいかかるし、嘉手納基地に入るのも色々と許可証など必要になるので更に時間がかかります。
とにか~く、こちらがお願いしてもスムーズに対応してくれないことが多いので時間がかかってしまうんですよね。
それにしても8時間機内にいるのは大変!
今回8時間もかかったANA機は、給油後に整備作業が必要になったみたいですね。
SNSで当該機に乗っていた乗客が、事細かに時系列を載せてくれてました。
機内では席を立っても良い
外の様子は見れませんが、席を立ってもいいしスマホの利用も可能、トイレも行くことができます。
機内では飴や飲み物など配布された様子でしたが、お腹はすくものの倒れる人など出ずになんとか再出発できたみたいですね。
補償などはあるのか
LCCを除き、臨時着陸(ダイバート)をした場合の補償はあります。
しかし上限は決まっています。
その場で現金をもらえることもあれば、後日指定した口座に振り込みする領収書清算をする会社もあります。
今回も那覇空港到着時に飲食をもらえたり、後日お金が振り込まれるなどと補償があったみたいですね。
まとめ:『燃料が足りなくなると、嘉手納基地に民間機が臨時着陸する』
嘉手納基地に民間機が臨時着陸をすることは、数年に1度起きる事象です。
数年に1度しか起こらないため、臨時着陸をしてしまった場合は再出発にとても時間を要することになります。
当該機に乗っていた人の事を考えると、本当に大変だっただろうなと感じます。
沖縄の空気を吸うまでに8時間以上かかっていますからね。
そもそも沖縄本島に那覇空港しかないのもどうかなとは感じますけどね。
沖縄旅行の際は、嘉手納基地に臨時着陸をするケースもあるんだと知っていただけたらと思います。
とりあえずお菓子などの食べ物は、多く機内に持ち込もう!
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